WEBには答えが、紙には「問いかけ」がある
何か知りたい情報があるとき、私達はWEBで検索をして回答を得ます。WEBには欲しい答えがあり、無駄なくストレートにそれにたどり着く事を知っているからです。
紙は違います。
雑誌やパンフレットのページを、指でペラペラとめくりながら、つい寄り道したり、思わぬところに目が止まったりと、いわゆる目移りをします。こうした「好奇心への問いかけ」が、ユーザーに新たな行動へのきっかけを与えるのです。WEBではそもそも、知りたいことを検索するので、「あれがほしい」「これを調べたい」という明確な目的があるときに有用です。検索窓に打ち込むキーワードがまだ見えていないときは「紙」が役立ちます。
紙は脳に、より深く「記憶」を刻む
2012年、とある5つの大学の学生、及び大学院生を対象とした実験がありました。それは電子書籍リーダー(9.7インチのiPad)と紙(A5サイズの紙)とでは、記憶や理解にどのような差を生むのかを調査するものでした。
実験の結果、随筆文(小説のような文学的文章)ではあまり差がでませんでしたが、説明文(学問をするための説明的文章)に関しては、紙の本の方がより記憶に残ることが分かりました。これは、印刷物からの情報が脳の長期記憶貯蔵庫に蓄えられることに由来しています。
参考文献 “表示媒体が文章理解と記憶に及ぼす影響―電子書籍端末と紙媒体の比較―.”
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション (HCI) 2012.29 (2012): 1-7.
「理解度」にも差が付く
前述の実験では、デジタルメディアと紙媒体とを比較して、得られる理解度にも違いが出る事がわかりました。同じ情報でも見る媒体が異なることで脳の反応が変わり、紙媒体の方がより情報を理解しやすいという結果が出ています。
ビジネスでも、何か重要な比較検討が必要な際には、資料を出力して手元でじっくり読み込む場面が多いのではないでしょうか。紙とデジタル、どちらがそれに向いているのかを、経験から理解しているためと言えます。会議で複雑な内容を伝えたいときは、紙に印刷して資料として配っておくと理解してもらいやすいかもしれません。
参考文献 “表示媒体が文章理解と記憶に及ぼす影響―電子書籍端末と紙媒体の比較―.”
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション (HCI) 2012.29 (2012): 1-7.
紙には紙の「検索性」がある
WEBなどのデジタルメディアの最大の利点が「検索性」であることはご承知のとおりですが、紙にも紙ならではの検索性があるといえます。一度目を通した紙のカタログを再び開くとき、「あのページはこの辺りにあったはず」という、感覚で探すことが可能なのです。
こうした「三次元的な記憶」は脳により深く刻まれます。特定のキーワードではなく、本の厚みやレイアウトの位置を頼りに瞬間的に情報に辿り着くことができるのは、紙のカタログの大きな利点のひとつです。
紙だからこそできること
紙の最大の利点は現実にそこにある、ということです。大事な個所にメモに書き込みをしたり、回覧の際は見てほしいページに付箋を貼ったり、再読の機会が多いページをドッグイヤー(折り込み)してみたり。ときには切り取ったりもするでしょう。表紙に加工をして、高級感や特別感を演出できるのも、紙ならではといえます。
この自由度が紙ならではであり、デジタルメディアとの大きな違いであると言えます。クロス・マーケティングの2019年のアンケートでも、読書離れは進んでいるものの読書手段そのものは紙の書籍が約9割となっており、紙に対する変わらぬ愛着を感じさせます。
まとめ
印刷物が消えない5つの理由を、もう一度振り返ってみましょう。
- 好奇心への問いかけ
- より記憶に残る
- より情報を理解しやすい
- 三次元的な検索性がある
- 現実にそこにある
紙媒体の魅力は上記だけではありません。紙媒体は今後も消えず、あり続けていくでしょう。デジタル全盛のいま、紙媒体はむしろプレミアムな価値観をユーザーに与え、特別な存在になりつつあります。
マーケティングにおいてもデジタルとアナログを織り交ぜた施策が注目されています。紙媒体とデジタルメディア、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえでコンテンツによってより適した媒体を選択することが重要です。